オンラインでの宿予約では,フォームに条件を入力して検索し,検索結果から選んで決めるという流れが一般的である.フォームには,日付・エリア・人数・予算などの基本的な条件のほか,食事の有無,部屋のタイプ,喫煙の可否,大浴場の有無などの「こだわり条件」が設定できることがある.しかし,それらの「こだわり条件」は操作性やスペースの制約のため,多くの人が気にすると思われる一般的な条件の中からしか選べるようになっていない.そのため,「自動販売機のビールが安い」「キッズスペースがある」といった,よりきめ細やかな条件では宿を探せない.そこで我々は,ユーザの旅行の状況を聞き出し,その状況に合わせた宿を提案する対話システムの構築を目指している.本研究では,的確な推薦のために,「肯定的事実」と「推薦対象」という言語知識を宿のレビューテキストから抽出する手法を提案する.例えば,「自販機のビールがかなり安いので,酒飲みには嬉しい」や「子どもたちには、キッズスペースや図書館など楽しかったようです」というレビュー文から「自販機のビールがかなり安い」ことは「酒飲み」に肯定的であることや,「キッズスペースや図書館」が「子どもたち」に肯定的である,という知識を抽出する.提案手法を用いて,旅行情報サイト「じゃらん net」1に投稿された宿のレビューから肯定的事実と推薦対象を 7,701 組抽出した.そして,そのうち 2,439 組に対して肯定的事実のアスペクトのアノテーションと,肯定的事実を推薦対象にアピールポイントとして用いることが妥当であるかの評価を,クラウドソーシングを
用いて実施した.